本を一冊は書きたい。
主張することが好きな人、教えることが好きな人は、誰もが一度は考えることではないだろうか。
僕も人生で一冊くらいは、という気持ちがあった。仕事をする上で信頼性が上がるからとか、箔が付くからとか、そんな程度に考えていた。
今回、書籍出版研修会というものに出席してみて、「なるほど」と思うことも多かったので、僕が特に大切だと感じたポイントを4点ほどシェアしたい。
書籍出版研修会とは、神奈川県行政書士会が催した会員向けセミナーのようなもの。
このような勉強の機会は、個々の行政書士が少しでも活躍できるように、専門的な知識の伝授や、新しい制度の解説、新しい動きなどの情報提供を受けることのできる大変貴重な場だ(事務局の皆様にとても感謝です!)。
今日はこれまでにはない初の試みとして、書籍出版を取り上げてくれたというわけだ。
僕も今後すぐに本を出したいと考えているわけではないが、本を出すうえで必要な情報は早めに手に入れておき、どのような流れで今後の事業を進めていくべきか、本を書くに当たって必要な条件など、情報収集の目的で参加した。
僕らは「本を出版する」というと、何か作品を作り上げることを考えるのが普通ではないだろうか。
ところが、今回講演をしてくださった横手さんはその先を見ていた。
所属は幻冬舎。
僕がもっとも刺激を受ける本を輩出している出版社だ。
僕がもっとも刺激を受ける本を輩出している出版社だ。
では早速、重要ポイントを僕なりの言葉で紹介しよう。
本は出版して終わりではない。目的はさらにその先に。
なぜ本を出版するのか。ここがブレてはならないと横手さんは言う。
どのような目的で本を書くのか、対象読者の設定を徹底的に詰める。失敗した本を出版しないためには、この時期(およそ1~1ヶ月半)が非常に重要なのだと。
たしかに、この点は出版に限らず事業をおこなう上では当然のこと。ターゲットの明確化やビジョンの設定というのは、事業をやるときもウルサいくらいに指摘されることだが、それだけできていない人・団体が多いということの証左でもあるのだろう。出版においても同様なのだ。
もし、この「目的」や「ターゲット」を定めずに書いてしまうと、それは得てして自己満足の結果になるに過ぎない。よくよく考えてみれば、アルファブロガーと呼ばれる有名なブロガー(=ブログ書く人)も同じことを述べているではないか。
「目的」や「ターゲット」が定まっていないと、説得力も生まれないし共感も生まれることはないだろう。このブログもきちんとしていきたい、と強く思った。
執筆は目的に沿って書ききらなければならない。
せっかく「目的」や「ターゲット」を特定してみても、実際に執筆するときにそれらを無視した内容になってみては元も子もない。
文章を書くときには、(ブログは人によるだろうけど)書く内容を定めて、調査して、構成を考えるもの。
その過程で自分の頭の中でモヤモヤしていた部分もクリアになってくるため、本筋から派生して「これは言いたい!」というような文脈が登場してきてもおかしくはない。それが本文に直接関係することであれば当然挿入しても構わないだろうけど、もし直接関係しないのであれば、どれだけ良い内容であっても書くべきではない。
なぜか?
それは、当初設定した「目的」から外れてしまうことになり、全体として主張したいことが曖昧になってしまうからだ。
誰かの心に訴えかけるためには無駄な部分をそぎ落とすことが必要。電車の線路も、たくさん経由したい場所はあっても、一定のルールに従って敷いているからこそ秩序ある町づくりが可能となるのだ。
この本でも、次のように書かれている。
「余談だが」「ちなみに」は使わない・・・「余談だが」という言葉が如実に表しているように、これらの言葉で始まる部分は余った話、つまりサイドストーリーです。削っても本題が直接影響を受けることはありません。むしろ、本題のストーリーの流れや論理展開を途切れさせる邪魔な存在である場合が少なくありません。(69頁より)
本は出版するだけでは商売ではない。知らしめることが大切。
以前は本も「良いモノを作れば売れる」という時代だったと横手さんは言う。今もそのように考える節はあるし、良いモノを書かなければ売れないのは確かなのだと。
しかし、良いモノを書かなければならないのは本を書いて売る以上は当たり前であり(商業出版の場合)、今は世にその本を知らしめる施策を講じる必要がある。たとえば、大型書店での陳列方法に目をやれば、妙に同じ本が大量に積んである場合があるが、あのようなディスプレイもまた本を買いに来る人に「おっ!」と思わせて買わせる施策なのだ。
また、新聞広告もそう。どの新聞紙に掲載するか、また何面に掲載するかによっても宣伝効果は全く異なるという。
その他にも、広告の書き方なども非常に重要になってくる。
世の中には良いモノがたくさん存在するが、それは多くの人に発信され、多くの人が認知しないと社会においては意味がないのだ。
この本はたまたま書店に立ち寄った時に買った本。新書だから安いし失敗しても損はないと思い、また人間の消費行動の心理的側面に興味があったので読んでみた。結果として、これまでに何冊かこの手の本を読んでみたけどこれはオススメ。
人に「伝えたい」と考えたとき、それを効果的に伝えるための術というものの考え方を学ぶことができるように思う。
本は第6のメディアとして活用すべし。本業への連続性。
ここで改めて本を出版する目的を考える。
事業を行っている人が書く本というのは、本業へのメリットがあると考えるからだ。だからこそ、ものすごい金額を負担してまで、戦略的に書いて売るための方法を出版社も考える。
幻冬舎では書籍というものを電子書籍と比較しても信頼性や保存性などに優れていると再確認し、また書籍が販売される(特に)大型書店の特性を、合わせて一つのメディアと捉えている。書店に訪れる人たちがどのような人たちなのか、当該書籍を売るターゲットにどのようにアプローチすべきか、と言った戦略的な仕込みを行うのだ。
本業との相乗効果を生み出すことが、作家としての事業者と出版社との間にWin-Winの関係を生み出す。今では、出版社はコンサルティング業としてのポジションも得ているのだ。
僕らが本を出版しようとするときになって、出版社と相談するときには、是非ともここまでの計画を自分なりに作り上げ、その叩き台をプロの出版社と共に発展させるべきだろう。
以上、多少なりとも参考にしてもらえればと思って書いてみた。
このような経過を全て意識して実践できれば、本を出版しようとするときに、単に「信頼性が上がる」とか、「拍が付くから」といったボヤけた表現を使うことはまずもってあり得ないのだろう。
今回の研修会を通じて一つ感じたことがある。
いろんな業界が同じことをいろんな観点から説明し、同じことを力説するというのは面白い。相手が個人であれ企業であれ、消費行動を生み出すという目的は同じだから、なのかな?
— 北川哲也さん (@ohige_beam) 6月 12, 2012
結局のところ、出版も事業でも、場合によってはスポーツでもそうかもしれないが、社会で一定の役割を担おうとすれば、特徴を出し、演出することが大切なのだろうということだ。
良い勉強の機会を得ることができた。
改めてこのような機会を提供してくださった本会(神奈川県行政書士会)に感謝!