Loading...
2012年6月27日

社会保障と税の一体改革に関する法案可決|おさらいと私見

たまには時事ネタでも。

社会保障と税の一体改革に関する法案が衆議院本会議を通過しましたね。消費税増税という点ばかりに焦点がいってしまっている感が否めませんが、数々の法案が可決されています。

今回は、改革の中身をおさらいし、消費税増税についてどうかんがえるか、っていう部分を少し私なりに整理してみたいと思いました。
完全な私見が入り込んでいますので、サラッと読んで頂ければと思います。



1.社会保障と税の一体改革とは?


社会保障と税の一体改革とは、そもそもどのようなものでしたでしょうか?

現在の社会保障制度の基本的な枠組みは1960年代に作られたものです。当時の日本は、戦後の高度経済成長に支えられており、経済は右肩上がりであることを前提に制度の社会保障の枠組みはつくられました。

ところが今日では、そのような社会保障制度が前提とした経済状況とは全く異なる状況にあります。少子高齢化が進み、経済成長率も1%弱、雇用情勢も悪化(非正規労働者の増加)という状況のもと、社会保障制度を維持することは不可能な状況です。

そこで、このような状況を打開するために、(1)「社会保障の充実・安定化」と、(2)「財政健全化」を旗印として社会保障と税の一体改革が提案されました。



2.具体的な方策について



では、実際にどのようなカタチでこの「社会保障と税の一体改革」を成し遂げるのでしょうか?上記の(1)「社会保障の充実・安定化」と、(2)「財政健全化」のそれぞれについて具体的方策を整理します。


(1)「社会保障の充実・安定化」について


ここでいう「社会保障」とは、①公的年金制度②医療保険制度③介護保険制度④少子化対策の4つを柱としています。そして、制度改革に当たって注目すべきは「限られた財源の中で、どのように社会保障費を配分していくか」という視点です。社会保障というのは、どこまでいっても「十分」といえる状況には至りません。どうしても重点的に配分すべき部分と、薄くなってしまう部分というのは出てきます。これはある意味で仕方がないものなのです。(だからこそ「新しい公共」という議論も登場するのです。)


【①公的年金制度】
今回の改革によって、「社会保障制度改革国民会議」という、上記①から④について総合的・集中的に協議する委員会が設けられることになります。

この公的年金制度についてのあり方などについては、この「社会保障制度改革国民会議」で検討され、実質的な制度の中身については今後詰められていきます。

また、社会保障番号制度の導入も早期に実現していくという内容です。


【②医療保険制度】
主な課題はやはり高齢者医療制度です。高齢者の数がしばらくは増え続けることになるため、医療費の増大は避けられない状況です。

このような状況のなかで、疾病の予防や早期発見などの推進、医療サービスの適正配置、さらには保険料負担の公平性の確保などが、講じられることになります。


【③介護保険制度】
これも高齢者が増えれば当然社会給付が増えることにつながりますので、個々の利用者の負担増を抑えつつ、必要なサービスをきちんと受けられるようにしなければなりません。

結局、広く国民皆で支えるしかない、という話です。


【④少子化対策】
今回の改革が必要な理由として、「少子化」問題があります。高齢者が増えても、それ以上に子どもが増えるのであれば、社会保障制度というのは成り立ちます。

そこで、子どもを育てやすい環境づくりを行うことが、生みやすい社会づくりにつながると考えるわけです。

具体的には、現在の保護者への給付の視点だけでなく、就労、結婚、出産、育児など各段階に応じた支援を総合的に実施していくということです。


(2)「財政健全化」について


このような①から④の施策を実行していくために財源を捻出する必要があります。それが今回の消費税アップ法案によって実行されるということなのです。

※実行と言っても、(1)のために消費税をアップし、それを通じて(2)を達成していくという流れになっています。

また、現在の最悪な財政状況を脱するためには、財源の確保のみならず、不要な歳出(コスト)のカットをしていく必要があります。

つまり、「財政健全化」というのは、社会保障費の増大が避けられない中で、現在の赤字大国日本がどのように赤字を削減していくのか、という社会保障の問題よりももっと大きなレベルの話になります。今回の消費税引き上げ分については「目的税」ですので、これらの①から④のためにしか支出されない、ということも重要です。つまり、消費税アップしたことにより、道路が増えたり、国家公務員の給与がアップするとかそういう話ではありません。



3.今後の見通し


ウェブ上のコメントを拝見していると、マニフェスト違反を批判している方が多くいることが分かります。これは当然ですね。とはいえ、マニフェストの法的拘束力は基本的にありませんので、違反したから詐欺罪が成立するとか、法改正が無効になるという話でもありません。

結局のところは、その政党に対する国民の評価が大きく傷つく、というところでしょう。それが一番大きなダメージになるわけですが。


とはいえ、こんなことは野田首相も十分理解されていると思います。私たち一般国民よりも圧倒的に国のことを考えていますので。そうすると、そうまでして今回の消費税増税法案を貫いている首相の考えというものが見えてくる気がします・・・



ところで、「なぜ消費税アップなのか?」という疑問も出ています。これは難しい問題ですが、所得税や法人税で賄うとなると実は負担者が偏ってしまうことになります。当然ですが、現役で働いている人が主な負担者になってしまうわけですね。

でも社会保障というのは、国民すべてが負担すべき問題です。しかも時間軸で考えるならば今の話だけではなく、後世にも配慮し、長期的な視点で運営していかなければなりません。そう考えたとき、まんべんなく誰もが負担する課税方法として消費税に着目するのは決しておかしなことではないと思います。

消費税には低所得者ほど負担が大きくなるという逆進性があると言われており、それを根拠に消費税増税を反対する人・メディアも多くあるようですが、国民総負担の方法としてこれ以上に公平性の担保された方法はあるのか、私にはわかりません。
しかも、逆進性の考え自体についてもかなり理論的な話ですし、税というのは消費税だけでなく所得税や法人税などの国税から、住民税などの地方税もあり、総合的に考える必要があると思います。


・・・税金って本当に難しいですね。
だから、批判がマニフェスト違反に偏ってしまって問題の本質が見えなくなってきてしまいます。首相をはじめとして、民主党トップの人たちもマニフェスト違反がどれだけ重いものかどうかは分かっており、その上でなお今回の改革を実行しようとしています。


わたし自身は民主党を応援しているわけではありませんが、今回の法案を通過させた点は日本にとって大切な一歩のように感じています。



さて衆議院を通過したので、次は参議院を通過するかどうかですが、自民党や公明党との間で三党合意を締結していますので、おそらく参議院も通過するでしょう。

あとは、消費税アップにかまけて政府がきちんと財政健全化に向けてどれだけ対処するかに注目していくべきでしょうね。




※次回は、今回の記事で取り上げていない「認定こども園法案改正案」について、私の勉強も兼ねて少々概観してみようと思います。ご興味あれば、チェックしてくださいね!
 
TOP