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2013年5月19日

弁護士と行政書士の違いは語っても仕方がないくらい別の職種

弁護士が行政書士を叩いているという話をTwitterで知り、読んでみると「まぁ仕方ないでしょう」と思うので、私の今の考えを書きたいと思います。話しの流れは下記のまとめ記事が分かりやすいです。


弁護士小川義龍氏の行政書士批判 - Togetter









この手の話しは弁護士業界をはじめとして、司法書士業界との間でも、社会保険労務士業界との間でもあります。「ここは俺たちの範囲、おまえはそっち」というような単純な話しに矮小化されますが、自分の仕事に強い誇りを持って業務に当たってますので、資格を持たない人が土足で入ることに感情的にもイラっとするものです(たぶん)。

で、今回ご紹介する批判内容については、私としては概ね賛同します。司法という領域は、人の権利が侵害されたことを回復する機能を持っていますが、行政書士は権利侵害に対してタッチすべきではないからです。


この点については特に大ベテランの方が「いや、簡単だから」とコメントされるのを耳にすることがありますが、まずもって「簡単ではない」し、「できることとやって良いこととは違」います。


私も以前弁護士を目指して司法試験を受験していましたが、やはりプロの法律家は能力がすごく高いです。ロースクールに通っていたときも本当に勉強の毎日でした。私は弁護士への道を諦めることになりましたが、今も法曹の人々を尊敬しています。人間性ではなくてね(笑)


さて、私はこのように考えていますので、「法律家」というフレーズも自分としてはあまり使いたくない思いがありますね。それは「法律家」というフレーズがこの国では紛争性を前提にしている言葉のように私自身の中で感じるからです。それに、このフレーズに私自身何も魅力を感じないんですけどね。「偉そう」だということは分かります(笑)


行政書士は法律家というよりも、手続屋です。行政と市民との間に立って、効率的に申請手続を運用するための存在です。税理士が税務において、弁理士が知的財産権において、司法書士が登記において、それぞれ市民と行政との間に立って活動しています。私の感覚からすると、行政書士は「その余の手続全般において市民をサポートする」というものだと感じます。だから資格試験も法律の総論的な知識を問うものばかりですので、そんなに難しいものではありません(資格試験を判断基準として考えても仕方ないですが。)。


そういう観点からすると、内容証明の仕事は微妙です。わざわざそのような書面を送る状況を考えると、後々まで責任を持てない行政書士が手を出すことは、倫理的に望ましくないと思うのです。とはいえ状況は様々ですし、倫理的にも問題が無いといえる状況も多くあります。他方で、契約書の作成については、法律的にも倫理的にも誰が作っても構わないでしょう。契約書は何でもかんでも裁判上の証拠のために作成しているわけではありませんし、どちらかというとビジネス文書です。ただその中には紛争に発展する可能性が高い分野もありますので、そういう契約については私だったら弁護士(その分野に専門性のある弁護士)に依頼すべきだと思います。こういった実情を無視して「予防法務」なんて書くと、司法的なニュアンスも入ってきてしまいますので、叩かれることはあるでしょう(笑)


以上は私の視点から書いているものですので、全然公的な意味はありませんが、まとめ記事にある弁護士さんが「市民の目線」を語っている点は私も大事だと思います。というのも、普通の人はどの専門家がどれくらいのスキルを持っているのか、誰に相談すればいいのか、ということの判別がつかないからです。だから何となくで相談にいくわけですが、この部分は専門家サイドの人間がきっちりと「これは弁護士さんに相談した方が良いですね」「これは税理士さんに相談した方が良いですね」というように道案内をすることが必要です。それを先に書いたように「できるから」という理由で手を出すと、何かあった場合に損失を受けるのはお客さんです。ここはきちんと考えないといけません。


ダラダラと書きましたが、相談に訪れる人の状態は様々です。ハッキリと紛争性があるとかないとか分かれば苦労しませんが、通常は様々な要素を抱えてます。相続手続なんて、紛争性があるケースもありますし、税務も登記も関係します。だから弁護士でない限りはオールマイティーに全部請け負うなんてことは法律的に無理です。

そういうわけですので、私としては、相談業務は「切り分ける」役割に徹していきたいと考えてます。相談に来られる人に対して適切なルートをお伝えすること、それが行政手続に関するものであればとことんお付き合いしますし、そうでない場合には信頼できる専門家と協働したり、紹介をする。そういう交通整理が行政書士がおこなう相談業務なんじゃないかと思うわけです。その辺を押し出した商品として「行政書士相談」が定着すると良いんですけどね。。




タイトルに書きましたが、弁護士と行政書士の違いなんて語っても仕方がないくらいに別の職種です。フィールドが違います。士業といっても社会のコマの一つですから、役割分担がきっちりして連動していかないと、良いサービスなんて絶対提供できません。


 
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