すごいのが出ましたね。特定非営利活動法人シーズ・市民活動を支える制度をつくる会が、三井物産環境基金から480万円の助成を受けて、NPO法人の認定取得を後押しするクラウドシステムを構築。その名も「認定NPO 取得サポートシステム」と言います。
今回はこちらのシステムについて、ちょこっと調べてみましたのでご紹介します。それと合わせて、専門家が進む道についても考えてみました。(― Blogging Worker’s Style)
そもそも認定NPO法人って?
認定NPO法人制度を簡単に説明すると、認定を受けたNPOに寄付をした場合に、寄付者が税制上の優遇措置を受けられるというものです。具体的には、1年間に支払う所得税から認定NPO法人に寄付した一定金額が還付されたり、法人が認定NPO法人に寄付すると、損金として認められる寄付金枠(一般枠)に特別枠を上乗せして、節税ができるというものです。
NPOという分野は、震災復興や環境問題、街づくりや福祉問題など、社会的課題にチャレンジするものですが、彼らの活動はこれまでのビジネスモデルでは収益性がない領域です。そのため、社会から広く「寄付」を募りながら、社会のために活動をしていく必要があるわけです。
しかしながら、認定を受けていないNPOに個人が寄付してみても、メリットはないわけですので、なかなか寄付が集まらない。そこで、認定制度を設けたわけですが、残念ながら認定を取れている法人は全国に4万6000以上存在するNPO法人の中で、たったの300程度です。この認定法人を増加させるべく、昨年NPO法が大改正を実現したわけです。
認定NPO取得サポートシステムとは?
NPOWEBには次のように書かれています。
このシステムの特徴は、質問に順番に答えていけば、認定要件の診断が自動的にされ、さらに、同時に申請書類が作成できるという点。質問に答え終わると、自身の団体が認定NPOの要件を満たしているかどうかの暫定診断が表示される。回答内容をシーズ側でチェックし、要件を満たしていれば申請書類の完成作業をネットでアドバイスして、NPO法人は申請書を提出できる。
すごいですね(笑)
しかも、
要件を満たしていなくてもどこを修正すればいいのかアドバイス。
これは大切ですね。助成金や寄付金のPST要件の取扱いは、ケースバイケースによるところではありますが、多くの団体が関係する助成金の取扱いについては、判断に困るほどに無限に種類があるわけではありません。
規模をもって手続をこなしていけば、そこまで難しい申請ではないのでクラウド向きだなぁとかねてより感じていました。それを実際にやってのけるところに、シーズの強さが感じられますね。
このシステムは、クラウドで完結せず、きちんと切り分けをした段階で税理士や行政書士が登場するとのことで、とても合理的な作り方だと思います。全部を一つのシステムで構築するとなると、システムの構築費に馬鹿にならない費用が発生してしまいますので、うまく専門性とルーティン的な部分を使い分けているところに「うまさ」があるように思います。
被災3県向けに無償提供するとのことなので、どんどん利用して認定NPOが増えると良いですね!
行政書士にとっては面白くない話し?
さてさて、ここからはブログならではというか、なかなか出てこない話しかと思うので、業としてNPO支援も今後していきたいと考えている身として思うことを書きたいと思います。
今年の4月から、NPOの認定申請に関しては行政書士の独占業務となりました。つまり、申請手続は本人(当該NPO法人)または行政書士が代理するしかおこなえなくなったわけです。このため、NPOの分野にかなり力を入れる行政書士が増えたことは事実です。
ところが、実際に今回こういうシステムができたことで、心中穏やかでない専門家も出てきていることかと思います。他の専門家が入ってきても認定申請に関する事業は勝ち目がなくなるわけだからです。
とはいえ、私自身の結論としては「それでも素晴らしいシステムだ!」と思うわけです。申請手続で勝ち目がないなら「引く」か「より良いシステムを構築する」か「別路線(争わないで併存する)」という方向で進めば良いのです。
私は、そもそも行政手続全般(許認可の申請、税務、社会保険、会計、登記)といったものは「本人ができてしかるべきもの」だと思っています。これらの手続は面倒ですし、難しいがゆえに、専門家が食べていけるわけですが、それでもそれらは事業者にとっては「コスト」なんですよね。
今後、日本ではあらゆる手続がIT化され、専門性が発揮されるような場面が相当狭まると思います。感覚でしかないですが後20~40年くらいでしょうか。
よく「NPOの目的はNPOが消滅すること」と言ったりします。つまり、NPOという組織が活躍する場面がなくなることが一番の目標なのです。本当は、あらゆる専門性というのはそういう方向で進まなくちゃならないと私も考えています。医者のいらない世界、弁護士のいらない世界、行政書士のいらない世界・・・
その過程で大きな摩擦も出てくるでしょうし、IT化が進めば仕事がなくなる人はどんどん増えていきます。そうすると、便利な世の中になるのに不幸な人も増えていくことになってしまうというジレンマにぶつかるわけですが、それでも専門職倫理というものを考えたときに、専門家が出ていく場面が減っていくことが究極的に住みやすい社会なのだと思うんですね。そして、そこを目指して活動することが公益性だったりするのかなぁと。
今回のシーズのシステムがそこまでドラスティックな性格を持っているとは思いませんが、個人事業者ではなかなか構築できないシステムを、組織として大企業の助成を受けて構築したという点は、社会的に見て非常に評価できると思います。
この業界で専門性を出そうと考えている人たちは、こういうイノベーションを増やせる方向で努力していきましょう。