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2012年12月2日

単なる現状維持ではなく、継続的発展が事業承継の目的(2)



前回の続きです。

高齢化が進み、国内人口が今後大きく増える見込みはありません。そうすると国内産業が拡大することを期待するのは難しい半面で、日本の財政を立て直すためには経済活力を落とすわけにはいきません。

そのための施策として事業承継を円滑に進めるための制度が日本にはあります。今回はそのご紹介をします。(-Blogging Worker's Style)





事業の承継には時間がかかる・・・




事業の承継の準備には7年から10年が必要と言われています。冒頭で「中小企業の信用は社長の信用」ということを書きましたが、この信用を少なくとも維持させるためには、これくらいの準備期間が必要だというのです。

そうすると、社長が何歳になったら準備すべきでしょうか?

国内企業の社長の平均引退年齢は67歳くらいと言われています。逆算してみると、57歳から60歳には後継者を育成することに真剣に取り組んでいく必要がありますよね。

たとえば建設業の場合、建設業の許可をもらうためには経営を管理する人が会社にいる必要があります。しかし、この管理する人として認めてもらうためには、その業務に関して5年以上は最低でも経営サイドの地位に就いていなければならないとされています。

つまり、建設業において後継者に事業を引き継ぐためには、最低でも引き継ぐ予定の5年以上前に後継者を役員に追加しておく必要があるわけです。建設業に限らず、法律上のルールとしてこのような対応が必要になるケースは枚挙に暇がありません。


また、社長が急に亡くなる場合もあります。
この場合、社長が保有する株式が相続財産になりますので、相続人が多数いる場合には経営権の争いが生じてしまい、事業活動そのものが停滞してしまうリスクがあります。だから予め後継者に株式を譲渡しておくなどの対策を取る必要があるわけですが、それには多額の資金が必要になったり、生前贈与として相続問題が発生した時に遺留分減殺請求の対象にもなってしまう可能性があります。

このような背景のもと、国の政策は事業の承継を円滑に進め、国内産業が停滞してしまわぬように次のような施策を実施しているというわけです。



円滑な事業承継を実現するための施策




では、具体的にどのような施策が存在するのでしょうか。


遺留分に関する民法の特例


法定相続人のうちの一部を除いて、相続人には相続財産に対して遺留分という最低限度の持分が民法上確保されています。このことによって、例えば一家の大黒柱であったお父さんが遺言書に「私の財産は愛する不倫相手に譲る」なんてふざけたことを書いていた場合にも、奥さんや子どもたちに最低限度の財産が確保されることになります。

しかし、こと事業承継の問題に関して言えば、この遺留分の存在によって、会社の存続に影響を及ぼしかねません。経営権を承継する複数の相続人同士が争い、また会社財産を食い物にしてしまうなんてケースは、小説だけでなく実際に存在します。そうでなくとも相続人の債権者が登場してくる可能性もありますので、経営権だけは何とか特定の後継者に渡したいと考えるのが自然です。

そこで、一定の要件を満たせば自社株式の価格については、遺留分を算定する財産に加えない(除外合意)ことや、一定の範囲で固定(固定合意)することが認められています。これが遺留分に関する民法特例という制度です。



金融支援策


会社の価値が上がっていくと、後継者でない者の手に渡ってしまった株式を買い取る場合や、多額の相続税の負担に対応するための資金ねん出が必要になってきます。

そこで、このような事情で経営が悪化することをさけるために、融資を受ける際の信用保証協会の債務保証や、日本政策金融公庫からの融資を特別な利率で受けることができるなど、金融支援策がとても充実しています。



相続税・贈与税の納税猶予制度


また、一時的に大きな資金ねん出が必要となる相続税等の納税を猶予してもらう制度もあります。
通常、株式を相続しても現金が手に入るわけではない一方、相続税の算定には株式の時価総額が基礎に含まれてくるため、お金がないのに多額の相続税を支払わなければならないケースが出てきてしまいます。

そこで、この猶予制度を活用することで、相続税の支払を遅らせることが可能なのです。

しかし、この制度の活用には様々な条件があるため、事前の準備を怠っていると使えないことに注意が必要です。



以上、事業承継をスムーズに進めるための制度について簡単にご紹介させていただきました。

くれぐれもご注意頂きたいのは、この制度は事業承継を円滑にするための準備を後押しするものです。もう今すぐ承継の手続をしなければならないとなれば、手遅れなものもたくさんあります。


事業承継というと、何だか現状維持のような発想を持ってしまいがちですが、事業承継は企業活動の発展のための手段です。つまり、事業の承継をうまくできるかどうかが永続して企業が成長できるかどうかの重要な節目になるわけです。


承継手続には財務面と法務面の両方の対応が必要不可欠です。是非計画的に準備を進めていくことをお勧めします。


なお、中小企業庁が発行している「中小企業経営承継円滑化法申請マニュアル」は必見です。



 
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