前回は中小企業の経営に関して、東日本大震災を原因として悪化したものに対する貸付制度「東日本大震災復興特別貸付」を紹介しました。
▼参考記事:
震災からの復旧を目指して/東日本大震災復興特別貸付
普通に経済活動をしていれば普通に稼げる、ということはあり得ません。
一つの会社には無数のステークホルダーが存在し、彼らにもまたステークホルダーが存在するというように、人や企業の無数の連鎖のうえに社会は成り立っています。そのため、どれだけまともに経営をしていても、どこかの金融機関が破たんすることにより、巡り巡って自分の企業に大きなダメージを被ることは十分にあり得ます(それが取引金融機関でないとしても。)。
今回は、そのような連鎖のネガティブな面に対処するための「セーフティネット貸付」制度を取りあげます。
この貸付制度は次の3類型で設けられています。
- 経営環境変化対応資金
- 金融環境変化対応資金
- 取引企業倒産対応資金
▼詳細情報:
セーフティネット貸付(日本政策金融公庫)■経営環境変化対応資金について
社会的、経済的環境の変化(物価高騰、円高、株安、経済不安など)の影響により、一時的に売上高や利益が減少しているものの中長期的にはその業況が回復することが見込まれる方が対象となります。
昨年の超円高水準により、輸出関連企業は大打撃を受けました。今年に入ってアメリカ経済が持ち直す傾向が見られ、若干緩和されてきた兆しはありますが、まだまだ「高い」状況です。この超円高の状況が想定外に長く続いたため、資金繰りが相当圧迫されてしまった企業も多いと思います。
「後は円安になるだけなんだが・・・」という方は、当面の対策としてこの制度を利用されてみてはどうでしょうか。
▼詳細情報:
経営環境変化対応資金(日本政策金融公庫)
■金融環境変化対応資金について(別枠)
金融機関との取引状況の変化により、一時的に資金繰りに困難をきたしているものの、中長期的には資金繰りが改善し経営が安定することが見込まれる方が対象となります。
事業を継続していく過程で、取引金融機関から借入れを行うことは一般的です。それを返済することで新たな信用を得るというサイクルも確立されます。
ところが、取引金融機関も一つの会社です。金融機関として事業を続ける中で監督官庁から業務停止命令を受けてしまうこともあり得ます。私たちには想像もできないような負債を抱えている場合もあり得ます。そうすると、いざ融資を受けようと思っていつも通り足を運んでも・・・・これまでと全然違う条件を提示されたりと、事業者としては受け容れ難い状況に直面する場合もあるわけです。
このような場合に、日本政策金融公庫で一時的に資金を工面し、その間に取引金融機関を変更したり、事業継続に支障をきたさぬよう対応することができます。
▼詳細情報:
金融環境変化対応資金(日本政策金融公庫)
■取引企業倒産対応資金について(別枠)
関連企業の倒産により、経営に困難をきたしている方が対象となります。
お得意様が経営破たんしてしまうことにより、ドミノのように連鎖してしまうことがあります。特に大企業の破綻により中小企業もそのまま連鎖で・・・というのはニュースで見たこともあると思います。このような緊急の資金需要に対応するのが本貸付けになります。
▼詳細情報
取引企業倒産対応資金(日本政策金融公庫)
■「別枠」について
上記の各見出しに「(別枠)」と記載しましたが、この別枠の意味をご存知でしょうか?
日本政策金融公庫の融資には、上限額が設けられており、複数の制度を併用される場合の融資限度額は、原則として1企業あたり12億円となります。別枠とは、この12億円の枠外の融資枠を指します。
以上、ざっくりとセーフティネット貸付制度をご紹介致しました。
(どんな場合でもそうですが)融資のご相談をされる際には客観的な資料が大切です。
今回ご紹介した貸付制度はいずれも「連鎖」に基づいて資金需要が生じた場合を対象としています。つまり、「ある事情」と「資金需要」との間に「因果関係」があることを説明(証明)しないと、本制度の対象かどうかが、融資担当者には判別がつかないんですね。
融資が下りるまでも一定の時間がかかります。ですので、少しでもスピーディーに融資を受けるためにも、一旦冷静になって、事業を客観視してみてください。
とはいえ、あまり厳密に考え過ぎて「いや、この事業悪化は自分の判断の誤りに基づくものだから融資はおりないはずだ。」と即断しないでください。それを決めるのは、融資をする側の日本政策金融公庫であり、経営者が決めるものでは決してありません。
※「借入申込書」もダウンロード可能です。
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