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たかの友梨やTBC、ミスパリなどの有名な企業名は耳にしたことも多いかと思いますが、いざ美容と聞いても「エステ」や「美容整形」などくらいしか思い浮かばない人も多いんじゃないかと思います。
実は「美容」と一口に言ってみたところで、相当に奥深いものがありまして、端的に「美容とは何ぞや?」という質問があっても、明快な定義を口にできるのは業界関係者だけなのではないかと思います。
今回はこの「美容」という観点から規制を考えたいと思います。
法律上「美容」とは、「パーマネントウエーブ、結髪、化粧等の方法により、容姿を美しくすること」とされています(美容師法第2条1項)。髪をカットしてくれる美容師さんのお仕事は皆さんご存じだと思いますが、この美容師法が想定する「美容」は「容姿を美しくすること」ですので、我々が想像する美容師さんのお仕事はその一部だということが分かります。
この定義からは「容姿を美しくすること」が美容だと分かりますが、何をもって「容姿を美しくすること」に該当するかは明らかではありません。これは結構問題です。何故なら、「容姿を美しくすること」を業とするためには、美容師の免許(厚生労働大臣の免許)を得なければならず、「容姿を美しくすること」を業としているにも関わらず、免許を持たない人は、個人事業の場合には美容所届けもしていないでしょうから、罰金30万円の罪に当たってしまいます。
では、美容関係の事業を行う人はすべて美容師免許を持っているか?というと、現実にはうんとは頷けません。だからといって、「なんたることか!!許せない!!」とも簡単には言えないところがあります。
理由を説明すると、美容院でのカットについては美容師免許が必要であるとの社会通念ができていますので、美容師を目指す人は当然に資格を取得するために学校に通います。ですので、美容師免許を持っていない人が業としてカットしていたりしたら美容師法違反であることに争いはありません。
ところが、美容業と呼ばれる中にも、最近になって「美容」業に仲間入りしたものや、これから仲間入りしそうなものもあります。
たとえば、まつエク(=まつげエクステの略)は、最近になって厚生労働大臣からの通達により「美容」行為に当たることになりました。つまり、まつエクを業として行うためには美容師免許が必要であると、一応なったわけですね。
ところが、まつエク事業というのは、かれこれ10年くらいの業界です。美容に興味のある女性がより美しく人を見せたい、輝かせたいと思ってマツエクの勉強をしてサロンで働いたり、独立してお店を出す人もいます。しかし、ほとんどの人はこの通達が出た時点で美容師免許を持っていません。ということは、一気に行政上は違法営業状態に陥ってしまうわけです。その数およそ数万店舗。
こういう状況で一気に摘発するのが正しい態度なのか?行政も悩ましいところです。だって、既成事実としてまつエクは業界として成り立ってしまっているから、それを殊更に介入してしまっていいのか、その介入の仕方も考えた方が良いんじゃないか、とか。
参考になる議論があります。
平成23年度第3回生活衛生関係営業等衛生問題検討会議事録
マツエクを事業で行う人たちにとっては、施術によって女性をより美しくしたいと思って事業に励んでいるわけですが、人のまつげを扱うのですから当然傷害が発生してしまう危険性もはらんでいます。実際に、被害の声も上がっており、行政としても放置しておくわけにはいかない。他方で、一気に摘発してしまうと路頭に迷う人々が急増し、ちょっとした社会混乱を生んでしまうことは避けられません。
法律を学ぶ人は、通達には法的拘束力はないと勉強します。通達は内部規則に過ぎないからだ、ということです。だからといって、「通達には法的拘束力がありませんので無視して営業しましょう!」なんて、攻撃は最大の防御みたいな激しいこと言ってちゃいけません(笑)訴訟で争ったって何年かかるか分かりませんし、コストもバカになりません。
現在はまつエクに美容師免許が必要であるとの理解が施術者にも浸透しており、美容師免許を取得すべく学校に通いながら生活や技能の低下を避けるためにも、そして何よりも常に自分の元に通ってくださるお客様のためにも事業を続けている人たちがいます。当然、お客様も容姿を美しく見せるために施術を受けるわけですから、美容行為に当たるということはもう争いはありません。
とはいえ、彼(女)らを、「美容師免許がない」との一事のみで犯罪者であるかのように語る人たちがいるのは残念で仕方ありません。行政としても、「通達が出たから」的ななし崩し的な対応をするのではなく、経過措置を掲げて大きな混乱を生じさせないような、はっきりとした措置を執るべきではないかと思いますね。
今後はネイルについても徐々に縛りが厳しくなるでしょう。
誰の為の規制か、規制手段をいかにするか、など行政(具体的には厚生労働大臣)の広範な裁量に委ねられているわけですが、だからこそ実態に即した現実的な規制の方向性を示してもらえると、我々行政書士も事業者の方々と行政の思いをつなぐパイプ的な役割を担えると思うのですが・・・