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2012年3月5日

で、事業者は何をすればいいの?暴力団排除条例を考える


暴力団排除条例が全国の都道府県で施行されてますが、その内容について具体的に理解している人は多くありません。

ところが、この条例は事業者など一般の人が名宛人になっている条項が含まれています。暴力団排除条例が何を目的に制定され、その目的を達成するためにどのような規制をかけたのか、一般の事業者(会社含む)はどのように行動すべきなのかを、神奈川県の条例に基づいて簡単にまとめてみました。

暴力団が決して遠い存在ではないなぁ~と思う人は、ご参考までに続きをどうぞ!






【目的】暴力団の影響力を皆で排除

第1条(目的)
この条例は、暴力団排除について、基本理念を定め、並びに県、事業者及び事業者団体の責務並びに県民の役割を明らかにするとともに、暴力団排除に関する基本的な施策、少年(20歳未満の者をいう。以下同じ。)の保護及び健全な育成を図るための措置、暴力団の活動を助長し、又は暴力団の運営に資する行為についての必要な規制その他暴力団排除を推進するために必要な事項を定めることにより、暴力団排除に関する施策の総合的な推進を図り、もって安全で安心して暮らすことができる社会の実現に資することを目的とする。

第4条(基本理念
暴力団排除は、暴力団が事業活動又は県民生活に不当な影響を生じさせる存在であるという認識の下に、暴力団を恐れないこと、暴力団に協力しないこと及び暴力団を利用しないことを旨として、県、市町村、事業者、事業者団体、県民及び暴力団排除に自主的に取り組む団体が相互に連携し、及び協力して推進されなければならない。

「暴力団排除」というとかなり強権的な印象を持つ人が多いかもしれません。しかし、暴力団とは言っても、基本的人権を享有する「人」です。国や地方公共団体としても、基本的人権を直接侵害するような法令や条例を制定することはできません。

他方で、憲法上保障された自由や権利は「公共の福祉」に反するような行使は許されません。暴力団が社会的に非難の対象とされるのは、過去の幾多の事件や、現在でも多く存在する一般人への威嚇が無くならないからであり、集団としての暴力団を押さえ込もうとするのはこの「公共の福祉」の要請と言えます。

この考えの当否は非常に難しい。個々の暴力団員の行為ではなく、所属する団体としての属性に基づく排除の憲法適合性については本稿の検討対象ではありませんので詳述しませんが、この条例や暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(暴対法)に反対する著名ジャーナリストの意見もマクロな視点で考えると頷ける部分があるのも事実です。

さて、脱線してしまいましたが、神奈川県の暴力団排除条例では「暴力団を恐れない」「暴力団に協力しない」「暴力団を利用しない」という3つの「ない」をスローガンに、民間側から暴力団の活動を封じ込めることに主眼があります。つまり、直接的に暴力団を対象にした規定もありますが、本条例はむしろ一般人が暴力団と関係を持たないように規制することに重きを置いているといえるでしょう。

それでは、私たち一般人に関する具体的な規制を見ていきます。

事業者としての責務

会社や事業を営む人(非営利組織も含みます)は、暴力団の活動を助長し、または暴力団の運営に資することとなる取引を防止するための必要な措置をとらなければなりません。

暴力団の資金源を断つことにより、活動を弱体化させることを目的としています。
そのために、事業者は、取引の相手方が暴力団に関係があると疑いを少しでも感じたら、相手方が暴力団でないことの確認義務(努力義務)、契約を解除する義務(努力義務)が課せられています。

また、暴力団関係者に対して、財産的な利益供与も禁止されています(出資や融資をしたり、受けることも禁止されてますし、建築工事の請け負いや、活動場所の提供も禁止される場合があります。詳しくはこちら(神奈川県警HP)をご参照ください。)。

これらに加えて、このような行為を目撃したり怪しんだ人は、警察に通報する努力義務も規定されています。


このように、暴力団排除条例とは言ってみても、規制の強度を暴対法に比べてかなり踏み込んだというわけではありません。ただ、事業者や一般人の側に(努力義務がメインの比較的緩やかなものですが)規制をかけることにより、事業者や一般人に暴力団からの協力要請を断る抗弁を与えている点は、大きな意味を有しているように思います。かつて総会屋対策のために利益供与を禁止した商法改正がありましたが、それに通ずる考え方といえるかもしれません(利益供与は罰則による強度な規制ですが。)。

当面の対処

以上ざっくりと規制内容を見てみましたが、具体的に事業者はどのように行動すべきかというと、なかなか分かりにくいところです。

"ん、怪しい”と思ったところで、「あなたは暴力団ですか?(。・ω・)ノ」と聞ける人はそもそもつけ込まれるようなことはないですし、普通の人はそんなこと間違っても聞けるはずがありません。また、暴力団に「カネよこせ(╬◣д◢)ァァン?」と言われて、「ムリ!(●`з´●)」と言える人がほとんどいないことも事実です。それに、一度関係性を持ってしまうと切ることも非常に難しいですよね。

ですので、契約の際に契約書をきちんと作成し、「暴力団排除条項」を入れるのが一番良いと思います。

たとえば、某大手金融機関のローン規定では下記のような条項を盛り込んでいます。

第●●条 (反社会的勢力の排除)
借主は、借主または保証人が、現在、次の各号のいずれかにも該当しないことを表明し、かつ将来にわたっても該当しないことを確約します。
(1) 暴力団
(2) 暴力団員
(3) 暴力団準構成員
(4) 暴力団関係会社
(5) 総会屋等、社会運動等標榜ゴロまたは特殊知能暴力集団等
(6) その他前各号に準ずる者
2.借主は、借主または保証人が、自らまたは第三者を利用して次の各号に該当する行為を行わないことを確約します。
(1)暴力的な要求行為
(2)法的な責任を越えた不当な要求行為
(3)取引に関して、脅迫的な言動をし、または暴力を用いる行為
(4)風説を流布し、偽計を用いまたは威力を用いて銀行の信用を毀損し、または銀行の業務を妨害する行為
(5)その他前各号に準ずる行為
3.借主または保証人が、第1項各号のいずれかに該当し、もしくは前各号のいずれかに該当する行為をし、または第1項の規定に基づく表明・確約に関して虚偽の申告をしたことが判明し、借主との取引を継続することが不適切である場合には、銀行からの請求によって、借主は銀行に対するいっさいの債務について期限の利益を失い、ただちに債務を弁済するものとします。

契約書は、お互いの意思の合致を前提に(もしくは、事業者の意思に相手方が同意したことを前提に)成立するため、このような条項を設けておくことにより、事業者としては、法律的にいつでも契約関係を清算することができます。また、「確約します」という規定があることで、事業者の相手方確認義務も果たされたことになるため、十分といえるでしょう。

このような規定は以前から大手の企業では導入されていましたが、今回の条例は町の中小企業などにも浸透させる意味があると思います。ですので、事業で使用している契約書のフォーマットなどがある方は、フォーマット自体にこのような「暴力団(反社会的勢力)排除条項」を盛り込んでおくことをお勧め致します。

「こんな対策もあるよ!」とか「こういうことに気を付けておいた方が良いよ」など、皆さんのご意見などもコメントしてもらえると嬉しいです!
 
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