しかし、Aにとっては当該サービスを受けないとさらに上の経済状況に身を置けないという場合があります。たとえば行政書士の仕事は行政手続の専門的代行業ですので自らやろうとすることも可能です。しかし非常に複雑で素人では手に負えないような手続もありますし、法律用語がそもそも分からず手引きも読めないことも多く、自分でチャレンジした結果途中で頓挫してしまうことも多いわけです。
私は、現時点で支払余力が決して十分でない人がいかに必要なサービスを受けられるか、という点も真剣に考えなければならないと思っています。
現時点で余力がないなら、分割はどうか?3ヶ月後はどうか?半年後は?1年後は?というようにAの状況に即した支払方法を考えることは一番分かりやすいでしょう。
では、第3者から得るという方法はどうでしょうか?
たとえば、Aには支払余力はないが、支払余力のある同業者BやCを紹介して、Aはあくまでも私の広告宣伝媒体として報酬の代わりに動いてもらう、というのも一つの考え方だと思います。労働して対価を支払ってもらうのです。
少し話を変えて、これが寄付を受けることができる法人であれば、一般の人たちや他の企業から寄付を得て収益を補うことも考えられます。Aには支払えない、Aには営業的活動も期待できない、しかしAには当該サービスを受ける必要があるという場合に、第3者に向けて広報するのです。「Aはサービスを受ける必要があるのに受けられない」「自分たちだからこそできる活動に寄付として託してください」などとメッセージを発していくのです。営業して寄付金を集めるのですね。
以上3つの方法を紹介しましたが、これ以外にも方法はあります。とはいえ、まず考えるべきはAから収益をきちんと確保することです。そこをないがしろにしてしまうと、他の手法は不確定性が増えてしまうため、最終的に提供者サイドが倒れてしまいかねません。
なお、ここでは「料金を値下げする」という選択肢は掲げていません。
料金を値下げするということは活動の価値を落とすことになるわけですから、確実にサービスの質は落ちます。落ちないように工夫することは大切ですが、提供者の事業規模によっては質を落とさずに金額を下げることは不可能です。というか、ほとんどの事業者には不可能でしょう。そうすると、値下げは感覚的には受益者に優しいと感じられますが、結果的に提供者にもサービスの受益者にも誰にとっても良いことはありません。質を落とさないのがプロだ、というのは詭弁です。
サービスには適正な価値があり、それを経済的評価した対価を受けるのが、正しく事業を継続していくために必須の要素です。
だからこそ、事業者はサービスの収益化にはとことんこだわっていかなければならないと思うのです。