人材派遣世界最大手のアデコ(スイス)は3日、同社の日本法人を通じて技術者派遣のVSN(東京・港、川崎健一郎社長)を買収すると発表した。買収額は9000万ユーロ(2011年末の合意時点で約91億円)。日本では従来の主力である事務系派遣の市場が縮小傾向にあるなか、技術者派遣を新たな事業の柱として育てる。(日本経済新聞)
多様な雇用形態がありますが、その実質はほとんど理解されておらず、派遣とアルバイトの違いを理解していない人や、そもそも派遣と正社員の違いをあたかも優秀か非優秀かで分けられた社会的な身分の違いというイメージのように受け止めている人も多くいるように思います。
労働者派遣法は派遣労働者の雇用の安定を図ることを目的としている一方で、労働者側・派遣先企業側双方の労働者派遣に対する誤った認識から、法が想定する派遣としての働き方と実体としての派遣労働にギャップが生じてしまってるため、結局において派遣事業自体に対する様々な批判がなされ、さらに派遣労働者のイメージダウンにつながってしまっているという状況です。
雇用の在り方や、働き方は従来とは大きく異なっています。終身雇用制度という言葉が化石のように使われることも増えましたが、日本の多くの企業は終身雇用を前提に人を雇い入れるし、そのような就業形態を期待する労働者は圧倒的に多いことでしょう。他方で、会社に対する忠誠なんて感じられないと思い、より良い条件の働き口があればセッセと乗り換えて、会社の空気と合わなければサッサと辞めてしまうことに抵抗を感じない人が増えてきているのも事実です。長く勤めない若者が多いという実情は、どちらかというと後者側と言えるのではないでしょうか。
人生において仕事の時間は相当部分を占めます。標準モデルある一日8時間労働で計算すれば年間300日×45年間で10万8千時間を働くわけですが、移動時間や付き合いなどを考慮すればほとんどの時間を仕事に関する時間と言い代えても大げさではありません。つまり就業観・仕事観というのはそのまま人生観に直結するとも言えるわけです。したがって、雇用の在り方・働き方は千差万別なのですから、派遣としての雇用も十分尊重されてしかるべきだと私は思います。
しかし、そうはいってもこれは机上の話し。実際の当事者の心境はより複雑なものがあります。働き方とひとくちに言ってみても、経済情勢を抜きに語れないわけで、派遣という働き方が自由を標榜しつつも不自由な就業形態であることには変わりありません。派遣先企業にとっても、様々な制約があるため正社員や契約社員に比べ不自由感が否めず、結局派遣社員をアルバイト程度にしか利用できないという声もあります。
アデコが専門技術者派遣を扱うVSNを買収したことは、現在および今後の派遣業界に対するニーズをつかむためと言えるでしょう。上記で述べたような派遣事業に関する机上論と現実のミスマッチから、事務系や製造業の派遣市場は縮小されており、今後は必要な人材を必要な時に利用したいという企業側のニーズに答えるような傾向性が強まると考えられます。専門技術者を常時雇用するとすれば企業側のコストがかさみますので、必要な時に必要な人材を派遣するという事業はより求められるからです。
将来的には、行政書士や弁護士・会計士などの士業に関する派遣事業も生まれるでしょうね。
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» アデコによるVSN買収・・・派遣業界に再編の兆し?