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2012年1月12日

“自炊”代行業者の違法性を考える(1) 私と“自炊”


自炊代行業者による自炊行為の違法性が問題になっています。

<問題のあらすじ>
iPadをはじめとしてタブレット端末の普及により、紙媒体の書籍を自らスキャナーを使用してパソコンに取り込み、取り込んだ書籍をタブレット端末等にコピーして、本としてではなく電子書籍として読むということが、近年拡大した。紙媒体の書籍をPC等に取り込む一連の流れは、”自炊”と呼ばれた。しかし、その“自炊”は非常に手間がかかる上に、スキャナーや裁断機が必要であるため初期コストもかかる。そこで、その自炊作業を”代行”しようという業者が登場した。自炊代行業者である。彼らの事業は、多数の自炊希望者のハートをつかみ、2010年から急激に増えた。他方で、自炊の結果裁断された本が市場に出回り始め、中には電子データとして流通しているものも目に付くようになってきた。そこで、2011年末、著名作家が原告団を組織し、自炊代行業者に質問状を送付し、求める回答を得られなかった2社に対して、著作権侵害を理由とした自炊代行差止訴訟が提起された。


私も実は”自炊”の恩恵を預かっている一人です。

私は法律関係の書籍を初めとして、2009年末で300冊程度の書籍が自宅にあり、置き場に困っている状況でした。また、外出先で勉強できるように多数の文献を持ち運ぶのは大変な苦労であり、電子データとしてパソコンに入れて持ち運ぶことができればどれだけラクなことかと思っていたところ、アメリカでSONYがリーダーという電子ブックを販売していたことを知り、「なるほど、pdfにすれば良いのか」と思ったわけです。

当時は”自炊”をしている人はまだ多くなく、ひとまずスキャナーを購入してカッターで本を一つ一つ分解するという作業から始めました。しかし、それには非常に時間がかかる。一日あたりせいぜい20冊が限度でした。そのため、結局当初pdf化しようと考えた書籍をすべてpdf化するまでに2ヶ月くらいかかりました。(正直、途中からは「こんなに時間をかけて本分がおろそかになったら本末転倒ではないか」と嘆いていました)


その後、アメリカでiPadという製品が出ることを知り、発売を待ち望んで購入。今ではiPad2(64G)に入れて持ち運んでいる状況です。これまで”自炊”した本は正確には分かりませんが、大体400冊程度で、そのほかに大量の資料をpdf化しています。けど、データ容量としてはたかだか50ギガバイト程度ですからね。マーカーも引けるし、書き込みもできるし、OCRで文字検索もできるので利用しやすさは半端じゃないと思ってます。 

さて、これだけ自炊してきた私でも、未だに自炊代行業者を利用したことはありません。自炊って作業はすごく面倒くさいので、他人にお任せしたい気持ちはアリアリなのですが、何となく利用できないでいます。その「何となく」という気持ちは、著作権法云々という類の気持ちではなく、どちらかというと本そのものに対する私自身の気持ちに近いのかもしれません。

私は本自体がとても好きです。著作権は文章や絵など書籍内のコンテンツに生ずるものですので、私が言うところの「本自体が好き」という感情は、それとはまた別個の感情だと思う。本というカタチで所有することの満足感や、私にとっては未知の情報がつまった一つの世界であるというのが本自体に対する私が抱く魅力でして、その本を裁断してしまうことに対する心地悪さと、責任みたいなものを他人に委ねたくないのだと思います。図書館みたいな家に住みたい、という憧れもあるくらいです。だから、本の個性に着目せずに、大量かつ定型的な処分に服させたくない、というような感情があります。

そうは言っても、電子化することの効用の大きさを私は知ってしまっている。電子化しないと消えてなくなってしまうことの怖さも知っている。本として所有したい反面、大切な情報(世界)だからこそ電子データとして、十二分に利用したいという思いもあるのが率直なところです。

そんなこんなで、自炊代行業者に依頼したことがなかったわけですが、どうやら作家自身が様々な「思い」で提訴に踏み切ったようなのです。私たちはどのように考えるべきでしょうか。


(つづきます。)



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