本当に相手に「伝える」ことを目的とするなら、詳細部分は削ぎ落すことが必要です。
人が一時的に記憶できるのはせいぜい10~20秒程度と言われています。つまり、20秒以上前の内容のほとんどは忘れてしまっているということです。
この点を無視して何かを伝えようとしても、それは伝えたつもり・理解したつもりになるだけ。であれば、最初っから伝えたいことだけに的を絞って、詳細な情報は必要な時に説明する(参照できるカタチにする)のが、最も親切な態度だと言えます。
何でも伝えたがる企業
私はコールセンターで仕事をしていた経験があります。そこでは、クライアントであるメーカーから、コールセンター事業をアウトソーシングされクライアントの希望に沿ったセンターの構築が必要となります。そのため、顧客のニーズよりもメーカー側の論理が優先されます。
ユーザーは何かに困ってコールセンターに電話をかけます。本来割く必要のない時間コストが生じているのですから、ユーザーとしてはてっとり早く「答え」が欲しい。
にも関わらず、コールセンターはユーザーの必要とする情報+αを伝えようとします。
なぜか?
「あの時ちゃんと説明してくれなかった」とクレームが発生する可能性があるからです。
そのため、コールセンターとしては、「あの時説明しましたよね?」を抗弁として用意しておきたいという心理状態が生まれ、必然的にトークスクリプトは長いものに仕上がってしまう。
結果として、一回の電話が数分から数十分にも及んでしまうのです。
でも、電話で聞いたことをほとんど覚えていないのがアタリマエ
当然、そんな長時間で、しかもほとんど良く分からないサービス内容についていきなり話しを聞いても、その内容を頭に保存できる量はたかが知れています。
そのためにコールセンターのスタッフは、理解を少しでも促すために、ゆっくりと抑揚を付けるなどの工夫をします。それがCS(顧客満足:Customer satisfaction)にもつながるのだと。
でも、そもそも人間の一時的な記憶力と言うのは10~20秒程度なのですから、電話媒体でどれだけ丁寧に話してみたところで、やっぱり残る情報量に大差はないわけです。音声コミュニケーションの情報伝達力の限界とも言えるでしょう。
ブログも同じなんだけど・・・
文字コミュニケーションも似ています。
正確に伝えたいと思えば思うほど、言葉が厳密になり文字数は増加します。
すると、読んでる方は一つひとつの文章の理解に注意を削がれ、全体像を見失ってしまいます。その結果、「で、どういう話だったの?」と聞かれても良く分からない。
私がブログを書くとき、二つのパターンがあります。
- ボヤっと書きたいことをボヤっと書くパターン
- 自分の考えをまとめたり、丁寧に伝えたいと思ってキッチリ書こうとするパターン。
前者は、何となく伝われば良いやって書いているので、読んだ人も何となく伝わっていると思います(笑) このビールが美味しかったのね、とか。
ところが、自分の考えをまとめるための文章や、少し正確に書こうとする文章は、すごくその内容に興味を持っている人以外には、面倒くさい内容に過ぎないことになってしまいます。結果として自己満足の文章に陥る(別にそれで良いんですけどねw)。
本来、自分の考えをまとめたり正確に伝えたい文章にウエイトが置かれているはずなのに、その文章が十分に読まれないのは、ここに原因があるんだと思います。
ということで省けるところまで整理してから書こう!
省く、というとネガティブに感じられる人もいるかもしれません。
しかし本当に整理された内容は、伝えるべきポイントが絞られています。文章の構成も理に適っていて、読んでいる人の頭の中にも文章の構造がスッと入るようなイメージです。
相対的に伝える必要性の低い情報は、思い切って削ぎ落す。
詳細はWebで!みたいな感じが良いのだと思います。
シンプルになれるまで考え抜くってのは、いやはや実に難しいですね(泣)
久しぶりにちらっと読み返してみました。
この本自体がとても省けるところを省いているので、非常に読みやすい。
「どんな人を想定して、どのようなことを伝えたいのか」という意図が明確でなければならないとは言いますが、その意味するところは省略すべき指針を明確にするということなのかもしれませんね。