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2012年4月11日

【レポート】NPO法人の実態と必要なサービス構築に向けて


様々なNPO団体の代表者の方々とお話させていただく中で、仕事でのアプローチ方法を改めて考え直さなければならないかもしれない、と考えています。

今回は、話の中で見えてきたNPO法人に対する理想論と実態とのギャップ、その改善策や私自身が担うべき役割など、備忘録的にレポートしたいと思います。




制度として想定されているNPOのカタチと、その実態とは異なっているケースが多いことが分かってきました。


ただ、それはNPOで活動している人たちがいけないとかそういう話しでないことは、あらかじめ断っておく必要があります。そうではなく、NPOの立ち位置が社会やそこに参加する人たちの間でも十分に認知されていないことに、議論の出発点があるように思います。



このブログでもNPOについて最近二つの記事を書きました。



Webマーケティングが思いを伝える?|特定非営利活動法人(NPO)と寄附の関係 
もちろんリアルの活動が何よりも大切ですが、それを広報するツールとしてのWebに勝るものはないのだ。そもそも寄附を受けるためにターゲットにすべきは、NPOと一緒に活動する時間はないけどサポートしたいと考 ...
 ◎寄附を募るためのマーケティング手法を検討しました。




NPO法人がまず「仮認定」の取得を急がなければならない理由 
NPO法人は営利法人ではないですが、事業活動を継続するために資金調達を考えなければなりません。地方公共団体から事業を受託して委託料を受け取るとか、自分たちで事業によって利益を得るなど、事業として収益が ...
 ◎本エントリーでは「仮認定」の社会的意義に注目しました。






二つの記事はいずれも、NPOの活動のみで生計を送っているような人たちを想定していました。

会社に勤務するのでもなく、公務員になるわけでもなく、しかし日々の生計も営みながら社会貢献を進めていくという形態として、NPO法人で活動をしている人を想定したエントリーだったわけです。


しかし、実際に団体の代表者の方のお話を聞いてみると、どうやらそのような活動を実際におこなえている法人は一握りに過ぎないと言います。ほとんどのNPO法人の構成員には本業があり、その本業に支障を来さない範囲でNPO活動を行っている。つまり、NPO法人そのものがボランティアに近い存在になっているということです。


しかし、この現状のままであれば、日本で期待された活動を十分に果たすことのできるNPO法人はなかなか育たないと思われます。なぜなら、収入のない活動では十分な活動ができませんし、それに協力できる人も限られてしまうからです。


ボランティアとNPOとは全く別モノ


そもそも、ボランティアとNPOとは全く異なる概念です(←非常に大切!)。


ざっくりと私の言葉で説明すると、次のようになります。

ボランティアとは対価性のない活動を自主的に行う個人を指す言葉です。「無償」「自由」「個人」というのがキーワードになるでしょう。ところがNPOは、対価性のない活動を自主的におこなう組織であり、そこでは「無償」「自由」「組織」というキーワードを用いることになります。

とはいえ、ボランティアとNPOとは組織性の違いにだけ差異が認められるわけではありません。


NPOにおける「無償」は、事業の提供先との関係で対価性が認められないだけであり、行政の受託事業を行う場合には行政から収入を得ることになります。つまり、実入りゼロという意味での「無償」を意味しません。


また、NPOにおける「自由」というのは、団体がどのような活動をしなければならない、というのは基本的にないということです。ただ、NPO法人として正式に活動する以上は特定の活動に限られますので、「自由」度は後退します。

ここで注意しなければならないことは、「自由」とは団体活動についてであり、そのNPO団体を構成するメンバーの「自由」を意味するわけではありません。メンバーは当然NPOの存立目的に沿って行動しなければならず、団体における内部自治というものが存在するわけです。したがって、好きなときにだけ参加するというのは、少なくともNPO法人では予定されていないことになります。


このような組織性のあるNPOが活動するために、ボランティアの参加を募ったり、受託事業を行ったり、寄付を受け付けたりするわけです。


NPOは収益事業を行ってはならない、との誤解


次に、NPO法人と「営利性」と「寄付」との関係を見ていきます。


まずよく誤解されているのは、「非営利」と「収益事業を営む」という二つの言葉は両立するということです。

「営利」というのは、収益事業の結果生じた利益を構成員に分配することを言います。言い換えると、構成員に分配しなければ「非営利」なのです。そして、従業員と構成員とは異なります。

たとえば、株式会社は事業によって収益を上げ、減価や従業員の給与、税金などの費用を差し引いた純利益のうち、一定の金額を株式会社の社員(法律上は株主を社員と言います。)に分配することをもって、営利性のある団体とされます。つまり、もし社員に分配することを目的としなければ「非営利」事業になるわけです(かなり簡単に書いてますので語弊を覚悟のうえです。)。


このこととパラレルに考えると、NPO法人もまた、収益事業を営み、その結果生じた利益をNPO法人の従業員に給与として支払うことは当然に費用として認められているわけです。

もちろん、限度と言うものがありますので、その部分は割愛します。


しかしNPOの活動は本来的に稼げないもの、という大原則


とはいえ、そこまでNPOの事業で収益を上げることは通常あり得ません。


なぜなら、そのようなことが可能であれば一般的な営利企業である株式会社が当該事業に参入するのが当然だからです。
というか、わざわざNPOとして活動するメリットが全くなくなってしまいます。

そのため、行政から事業を受託してその管理費を受け取る、というのが比較的多いパターンです。


受託事業と下請け事業 ⇒ 寄附の受け入れへ


結局、NPOが活動を続けていくためにはほとんどの場合、行政からの受託事業による収益を望むか、会員からの会員費用の切り崩しによるしかないため、活動は時間の経過とともに先細りしてしまうことになります。


その結果、気が付くとNPOは行政の委託事業に群がってしまうことになり、行政からも「NPOは行政の下請け」というレッテルが貼られてしまっているという声もありました。



果たしてそれでいいのでしょうか。

もちろん、それなら行政がやれば良いじゃないかという話にもなりますし、行政としても節約のためにNPOを使うという話になってしまっても仕方ありません。


このような状況を改善するためには、NPOが本来想定される事業性を実現していくしかないわけです。つまり、収益性は低くとも、社会的必要性の高い事業を推進し、その活動を助成金や寄附金によって支える組織作りです。


NPO法人の組織化の難しさ


ところが、言うは易しというものであり、実際に組織化を十分に行えている団体は多くありません。


もちろん、活動意識の高い人は団体としての規律の重要性を十分認識していますが、それでも組織としてまとめるだけのノウハウや経験、それに協力できるスタッフが足りないなど、人材不足という問題に多く直面しているようです。


ある代表者の方は、NPOと寄附との関係について、二つの側面から現在のNPO制度の問題点をお話しをされていました。

― まず「外部要因」。これは法律的な規制が実態に合わずに先行してしまっており、そこについていける団体が非常に少ない。なので、理念に合致する団体はそもそも乏しいことになる。
― 次に「内部要因」。これは団体に参加する人のスタンスの問題。NPOはボランティア団体程度にしか考えられていない節があるが、実は参加者にもその傾向がある。つまり「手伝ってあげる」の感覚。しかし、それが一般の会社ではあり得ないだろう。自分の都合を優先して参加・不参加を決め、団体のことは二の次。それでは事業はまとまらないし、しっかりとした活動はできない。そのあたりの意識改革も非常に重要である。

非常に示唆の富むお話しです。


この部分(特に内部的要因)を改善しなければ、昨年のNPO法改正の趣旨はさらに一人歩きしてしまうだけになってしまいます。


十分な事業計画と組織づくり、そして「認定」に向けて・・・


この状況でまずやるべきことは、事業の立て直しや再計画化といえるでしょう。


NPO法人として活動する以上、その解決すべき社会的な課題は何なのか、そのために自分たちが何を、どのように活動していくのか、という明確なプランニングが必要になるでしょう。


これは通常の営利事業と変わりはありません。

もちろん、活動手法は異なってくるでしょうが、非営利事業だからプランニングが甘くて良いなんてことはないわけですね。


ただ、そうはいっても悠長に時間をかけているわけにはいきません。
前回のエントリーでも書きました通り、PST要件の不要な「仮認定」を受けることができる法人が現時点では暫定的に広いですが、暫定措置に過ぎないため今後「仮認定」を取得できなくなってしまう法人も続々と生まれてしまうからです。


  1. 個人が認定NPO法人に寄付をした場合の寄付金控除(所得控除or税額控除)
  2. 法人が認定NPO法人に寄付をした場合の損金算入限度額の拡大


この二つの効果をまず受けつつ、その上で3年以内にPST要件を満たして「認定」や「指定」を受けていくべきであり、その行動はまさに「今」スタートすべき時期にきています。


外部のバックアップ体制(NPOを支えるNPO、各種専門家etc)


とはいえ、いきなり何から始めれば良いのか分からない人も多いはず。


この当たりはさすがNPO業界です。

NPOを支えるNPO法人がいくつか存在し、その団体がハブとなって行政や企業との窓口の役割も果たしてくれています。まずはそのようなNPO法人に相談してみるのも良いでしょう。


また、税理士や行政書士の中にも、NPO法人の運営について詳しい者もいます。


いずれにせよ、身近な専門家や団体を足がかりにして、行動を開始することが良いのではないかと思います。


わたしのやるべきこと ⇒ 支援策のマッピングとプランニング


今回突然アクセスさせて頂いたにも関わらず、親切に団体運営の難しさや実情をお話しいただいたNPO法人の関係者の方々には深く御礼申し上げます。


まだまだNPO法人の果たすべき役目に十分に役立てない身ではありますが、仕事を通じて各NPO法人の活動の活性化に貢献できるよう、私自身にできるバックアップ体制を構築していきたいです。


そのためにまずは、業界全体にどのような支援体制があり、助成金や事業の情報がどこにあるのか、そのために準備すべき組織の在り方、NPOならではの事業プランニングの研究など、やれることは多いように思います。また、そのようなコンサルティングができなければなかなか必要とされるサービスを構築することはできないだろうと、プレッシャーも感じるところです。


本ブログでも少しは役に立つような記事を書いていけるよう心がけたいと思います。
また、このような記事をきっかけに参考情報や批判なども頂戴できれば有り難いと思います。

宜しくお願いします!





 
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