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2012年4月30日

サービスの質は営業形態の問題ではない|医薬品ネット販売規制訴訟を題材に考える


先日、一般用医薬品のネット販売規制に関する訴訟の控訴審判決が出ました。

原告であるケンコーコムとウェルネットが、省令が薬事法の委任の範囲を超えて無効であることを前提に、省令上禁止されたネット上での販売権を有することの確認を求めていました。一審では訴えが棄却されましたが、逆転勝訴しました。

今回は訴訟の中身よりも、インターネットVS対面という図式が正しいのか、ということを考えてみます。


一般用医薬品といっても、副作用が生じる危険性はあります。


使用方法については注意する必要があり、薬事法上、一般用医薬品について販売店に薬剤師などによる説明義務を課しています。厚生労働省はこの法律を受け、ネット販売ではこの説明義務を十分に履行できないと考えたため、省令というカタチで対面販売のみに販売方法を限定したわけです。


この規制を設けた前提には、インターネットに対する信頼の低さがまだまだあるのでしょう。
国を管理する側としては、ある意味で仕方がない面もあるとは思いますが、残念ながら考え方の方向性は正しくないように思います。


たしかに、医薬品が人体に直接悪影響を及ぼす可能性を有する以上、他の一般商品のネット通販と同列に論じられるものではないというのは感覚的には分かります。


しかし、それは「ネットだから」というわけではなく製品自体のリスクに基づくものです。
本来、規制の在り方としては、そのリスクをカバーする手法を検討しなければならないはずです。


残念ながら、そのような手法を採用せずに抽象的な危険のみで一律に対面販売以外の販売方法を省令で規制してしまったことは、規制の強度が大きすぎます。それゆえに委任の範囲を超えたと評されるのです。




ところでインターネット営業と対面での営業は、二項対立的に論じられることが多いように思いますが、サービスの質は営業方法によって左右されるものではないように思います。


最近はインターネットでも行政書士の仕事や税理士の仕事を請け負っている業者が増えてきました。
実は、そのような業者に対する同業者からの評判はあまり良いものではないのですが(笑)、それは営業形態に基づくというより、単純にサポート方法であったり、安易な仕事をしていると見なされていることに基づいているんだと思います。それに、単純に料金が安くて勝ち目がないとか。


しかし、私はこれまでに同業者のサービスをインターネット上で利用したことがありますが、その業者は非常にスピーディーに、私のニーズをストレートに叶えてくださいました。しかもリーズナブルに。


私たちの業界だけではないですが、ユーザーが明確な意図を持って利用する分には、少なくとも営業形態がネットであろうが対面であろうが違いはないのだと思います。むしろ、ネットの方が利便性が高いことは誰も否定できないのではないでしょうか。


他方で、そもそも使い方が分からないような場合(専門家を利用する場合によくあると思います。)には、周辺的なこともいろいろと訪ねることができる対面営業の方が結果としてユーザーの希望にマッチすることが多いと思います。


このように、私たち一般の人がどのようにサービスを利用するかが大切なのであって、抽象的にインターネットだから良くないとか対面だから良いとか、そんな話ではないわけです。どっちも大切なのです。


今回の訴訟は、行政の論理もとても分かりますが、しかしながらケンコーコムが勝訴したことは非常に意義があるように思います。対面と比較してネットだから規制するというのは、この国はどこに
向かうのかと不安になってしまいます。国が上告するかどうかは分かりませんが、議論の争点を見失わないようにする必要がありますね。



この点で控訴人代理人弁護士の阿部泰隆氏が、

一審が「対面販売とネット販売を比較してどちらが安全か」という点が争点になっていたことに対して、控訴審では「ネット販売は禁止するに値するか」という点を論じたことを評価した。(CNETより)

と語っているのは、まさにその通りだと思います。




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