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2012年4月22日

お祭りの経済|コミュニティ・ビジネスを考える大切なヒント




コミュニティ・ビジネスという言葉をご存じでしょうか。

地域が抱える課題を地域資源を活かしながらビジネス的な手法で解決しようとする事業のことを、コミュニティ・ビジネス(CB)と言います。この考えは実は新しい考えではないようです。

今回は、「市民まつり」に参加してみて、私が行政と市民との関わり方についてふと感じたことを、少し掘り下げてみたいと思います。

コミュニティ・ビジネスは、適切な役割分担とそれに基づくバランスが保たれることにより実現するのです。



1.茅ヶ崎市の「春の市民まつり」の構造


今回私は、4月22日(日)に催される茅ヶ崎市の「春の市民まつり」のスタッフとして、お手伝いをさせていただくことになりました。昨年の秋の市民まつりに参加させて頂いたことをきっかけに、今回もお声をかけて頂いたわけです。

さて、このお祭りは、茅ヶ崎市が主催となり、春の市民まつり実行委員会という市民が企画・運営することにより開催されるもので、味方によっては行政と市民(行政と市民とをつなぐ中間団体)の共同事業と捉える事ができます。

行政である茅ヶ崎市が中央公園という「場」を提供し、施設の利用について管理をする。
イベントの企画や運営を行うのは実行委員会を中心とするスタッフであり、そこにボランティアが参加して進行する。
店を出すのは市民団体であり、各お店は決められたルールを守りながら店を営業し、中央公園という施設を守りつつ参加者相互に活気をもたせる。

この「市(行政)」「実行委員会」「市民団体」という三者により「市民まつり」は成り立ち、来場する人々がただ楽しむだけでなく、地元の人たちがどのようなことをやってるのか、どんな考えを持っているのかなど、お互いを「知る」ことで茅ヶ崎市の活性化へとつながるのです。

【 三者の役割分担 】

2.祭りの意義と経済的効果


もともとお祭りとは、儀式や政治など、普段わたしたちが馴染みのない意味として使われておりました。とはいえ、そこには多数の「人」が存在し、ある特定の方向にエネルギーが向かった集団を構成していたことは、普段わたしたちが使っている「お祭り」という言葉と、意味するところは同じです。

現代では「フェス」という言葉が使われますが、これらもお祭りの一種です。


さて、お祭りはどの程度の経済効果を生むのでしょうか。

さすがに茅ヶ崎のお祭りについて経済効果を研究した報告書はないかもしれませんが、Webで検索していると東北6大祭りの経済効果を調査したレポートが見つかりました。


▼参照サイト;
 『東北6大祭りの経済効果』(株式会社荘銀総合研究所)

上記記事では、、「青森ねぶた祭り」(青森県)、「秋田竿燈祭り」(秋田県)、「盛岡さんさ踊り」(岩手県)、「仙台七夕祭り」(宮城県)、「山形花笠祭り」(山形県)、「相馬野馬追」(福島県)の経済効果をまとめているわけですが、それぞれのお祭りは数十億円から数百億円にも上っています。
これらのお祭りが特に規模の大きなものであることを前提としても、一つのお祭りに投入されるエネルギー(活気やお金)が一つの地域に短期間に集中するのはすごいことです。

このように、お祭りはそれ自体がもたらす出会いや楽しさはもちろんのこと、その地域の活性化や経済効果は相当なものなのです。


3.お祭りからコミュニティ・ビジネスへ


お祭りの経済的な効果を、数日という短期間のためだけで満足するにはもったいない。
もっと継続的に、地域にエネルギーが集中するようなカタチの事業を生み出すことはできないか・・・


一昔前、経済は各地域の商店街で行われていました。小さな個人事業のお店が多く集まり、そこに地元の住民は集まった。小さな単位ではあるけれども地域が潤う程度には活気があふれていた。

これは上記で見た祭りと同じ構造です。

ただ、現在はお祭りほどには単純な経済構造にはありません。
小さな個人商店はどんどん店を閉め、住む場所と経済活動(収入を得る活動)は区別され、ベッドタウン化した地域は相互のつながりが弱くなってしまいました。住民と行政との距離は広がるばかりで、公共サービスは行政が勝手にやるものであり、住民はそのサービスの受益者である、という構造(認識)です。


しかし、その構造もまた変化しつつあります。

価値観の多様化が言われて久しいですが、それに伴い社会で解決すべき課題も多岐にわたってきました。しかしながらその課題を全て解決するには限界があり、地域ごとによっても課題の重みは様々。

そこで近年では、地域の課題を地域のビジネスによって解決していこうというコミュニティ・ビジネス(CB)の考えが強くなっています。地域の古き経済構造に、「当該地域の課題解決」という役割を担わせた言葉と言えるでしょう。

CBの実現により、行政コストの削減のみならず地域住民の雇用の促進、街の活性化など、ポジティブな効果が生まれると期待されています。


4.コミュニティ・ビジネスの担い手/行政とNPOの協働が出発点


CBの担い手については、NPOが積極的な役割を演ずることが期待されています。
しかしながら、様々な事情からその担い手が十分に育っていないことが、それ自体として課題に挙げられるのが実情です。

▼過去記事;
 【レポート】NPO法人の実態と必要なサービス構築に向けて

今後、NPOが育ち、企業や個人が地域の課題解決に関心を寄せるようになること、これが今後目指すべき方向性であることは間違いありません。


とはいえ、市民まつりの構造と同様、行政と市民との関わり方はフラットなものではありません。
行政はあくまでも「場」や「機会」を公平に提供し、市民がその「場」や「機会」を積極的に参加し活用する。この関係が大切です。

そして、身体的なハンディや経済力などの理由から、この関係性に入ることの容易ではない人々を、地域社会でサポートする必要があります。これは、NPOや企業、それに携わるボランティアの人々など相互の関係がうまく作用することで実現し、それが地域の活発化や豊かさへとつながるのです。


このバランスを実現するまでの道のりはとても長いとは思いますが、行政がイニシアティブをとって、その動きをサポートする様々な人たちが適切に機能することで必ず実現していくでしょう。私自身も、その歯車を円滑に回す役割を担えるようになりたいと最近強く感じます。


市民まつりというのが、このような目的を有しているのかは定かではありませんが、お祭りの社会的な役割をビジネス的に捉えなおしてみるというのは、地域経済の基本を理解するうえでも有効なのではないかと思います。





今読んでみたい本の一つ。

ビジネスモデルを考えるにしても、前提となる多くの事例が必要ですが、まだまだ自分には足りない部分が多いです。コミュニティ・ビジネスに突如興味を持ち始めたものの、ノウハウを学びながら、とはいえ何よりも人のつながりを大切にして、自分の役割をまっとうしていきたいですね。


 
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