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2014年1月20日

伝統を守るということと、新しいものを取り入れるということとは連続している

 これは私が所属している青年会議所という組織で書いたブログの書き直し記事です。文章というのは不思議なもので、書いてから数日経ってみると再考してみたくなります。一度アウトプットすることによって、一度そこで思考を確定させ、再考することでその次のステージを考えられる。この良さを直感的に感じているから、「ブログを書け」ってアドバイスが出てくるのだと思う。




「福寿園は『無声呼人』(声なくして人を呼ぶ、徳のあるところには、呼ばれなくても人が集まるという意)という家訓のもとに京都の地で二百有余年、茶業を営んできましたが、業を継いできた先人は茶づくりの伝統の術を活かしながら、つねに新たな時代の技術やビジネスを取り入れて家業を発展させ、日本の心を伝えてきました。つまり伝統というものは、歴史と未来を融合させた”足し算の発想“によって継承されるものなのです。そして、二一世紀の福寿園がこれから将来にわたって価値ある存在であり続けるためには、明日のために何をするのかが問われていると、私は考えました。明日のために福寿園はどんな足し算ができるのか、と」
(『なぜ、伊右衛門は売れたのか。』峰如之介 著/日経ビジネス文庫 150頁)


今、若い人で「伊右衛門」というサントリーのペットボトル飲料を知らない人はいないでしょう。スマートなフォルムのペットボトルに、薄い緑色の包装、そこに「茶」という字が丸で囲まれ、「福寿園 伊右衛門」と書かれたボトル。味は少しまったりした感じの若干の渋味の利いた緑茶。たぶん、あなたの口にも思い出されているのではないでしょうか。










このペットボトル飲料が市場に登場したのは、ほんの10年ほど前。既に200年以上の歴史をもっている福寿園というお茶の老舗ブランドは、急須でお茶を嗜む方なら誰もが知っていた。おそらく、ペットボトル飲料として世に放たなくとも、今でも福寿園のブランドは力強く存在し続けていただろうと思う。

では、あなたは自分でお茶をいれるでしょうか?特に10代から20代、おそらく30代の多くは急須でお茶を入れるという習慣はあまりないでしょう。それでも、伊右衛門というお茶があること、福寿園という会社名だか場所の名前があることはなんとなく知っている。




「私どもの会社は事業ではなく、家業です。私一代でしたらお受けいたしますが、代々伝わってきた暖簾(のれん)を受け継いでいくことが福寿園の社長である私の仕事です。最近、緑茶飲料が人気になって飲まれていることは存じていますが、サントリーさんがやられている緑茶飲料ビジネスという事業は、うちの家業とは相容れないものでしょう。そうした相容れない事業と提携することで、代々受け継いでいかなければならない福寿園の暖簾に、万が一でも傷をつけることはできないのです。」
(『なぜ、伊右衛門は売れたのか。』峰如之介 著/日経ビジネス文庫 145頁)



「伊右衛門」が登場する前、サントリーが福寿園に事業提携を申し出たとき、福寿園社長はこう言ったそうです。家業というのはバトンを次に引き継ぐことを行い続けるもの。既にあるブランドをきちんと守ることが使命であり、博打をするものではない。

でも、福寿園はサントリーと提携をした。その意図は、冒頭に引用した「歴史と未来を融合させた”足し算の発想“」でした。


この発想は企業活動だけでなく、まちづくりにおいても当てはまります。それ以上に、個人の生き方、特に若い世代が持つべき姿勢とも言うべきものではないかと思います。

2月27日に福寿園の社長である福井正興様に、茅ヶ崎で講演をしていただくことになりました。テーマは「若手リーダーが今すべきこと」。実際に、現在リーダーであるということではなく、リーダーとしてまちにコミットすることが期待されている若い人たちに向けた講演会です。

わたしたちが住むまちにも多くの歴史が存在します。これまで住んできた多くの市民の歴史の上に、私たちの歴史が積み重なり、後代へとつづく。それがまちです。今回の講演を機に改めてまちと自分、まちと仕事のつながりについて考えていただけると、非常に有意義なのではないでしょうか。きっと新しい気づきが得られることと思います。




2月末に京都福寿園の社長、福井正興さんにご講演いただくにあたり、伊右衛門というお茶が誕生する背景を少し紹介させていただければと思い、書いたエントリーだったわけですが、ここのポイントは要は「伝統=ずっと同じカタチ」ではないということでした。

社会も人も変わり続けています。常識だって、ほんの20年前とは変わってきている。いや、本質的な部分はあまり変わらないのだろうと思いますが、それでも本質の現れ方は確実に変化する

ひるがえって、自分たちの仕事について考えてみたとき、例えば私は個人のクライアントについては相続手続きだったり、遺言書の作成を手伝ったり、クーリングオフの相談に乗ったりするわけだけど、伝統的に士業(サムライ業)は同業や他の士業と協力関係にはなるけども、あまり別の業種と組むことはない。しかし、世間にITが浸透し、これだけネットで便利なサービスができている中、士業のサービスは従来のままの提供方法で良いのか、これは日々考えています。おそらく、これまでのものでも良いとは思うけど、個人的にはもっとIT企業とのコラボレーションや想像もしていなかった業種とのコラボレーションも考えていきたいと思っている。

単なる新サービスの開発という意味ではなく、分からないことを相談できる窓口が、もっともっと身近にあってしかるべきだと思うわけです。少なくとも20代や30代の人が相談しやすいカタチとして。

100個、1000個チャレンジしてみて、一つでもヒットすれば良い時代。失敗を恐れずチャレンジをしていかなくては。ね!






 
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