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2012年2月2日

これで完成!会社設立に必要な5つのステップ


以前「起業のススメ」を書いたことがあります。いわゆる「週末起業」というものです。いきなり事業を起こすために会社を辞めたり、生活を激変させることなく、収入をちょこっとアップさせつつ経営センスを身につけよう、という贅沢な理想論です。

しかし、本気で事業をやっていこうと考える人は、最初から株式会社などの法人化をすべきでしょう。毎月かかる固定費や開業費は多少高くつきますが、しっかり事業を育てようと考えているのでしたら、信用もあり継続性を前提とした法人形態をお勧めします(株式会社か合同会社か、という選択もあります。)。

何よりも、利益が上がれば税金の額も個人事業よりも株式会社化した方が断然お得です。少なくとも、この社会は今も、そしてこれからしばらくも株式会社制度を前提に作られているため、このルールで軌道に乗らせることが成功のもっとも基本的な流れといえます。

そこで今回は、株式会社の設立の手順を、参考になるリンクなどを交えてご紹介したいと思います。専門家に依頼するにしても、自分で設立するにしても、基本的な知識や注意点は理解しておく必要があります。そのうえで、自分の事業計画に見合った組織を作りましょう。


ここでは、一人で会社を起こそうと考えている人を例に手順を説明します(発起人一人による設立)。数名で起業することを考えている人や、既に事業を起こしている人が新規でそこそこの規模の株式会社を設立する際にも、基本的な考えは同じです。

会社設立の大まかな流れは以下のとおりです。

  1. どんな事業を行っていくのか計画を立てる
  2. 定款を作成する
  3. 定款の認証をする
  4. 会社の財産を形成する
  5. 設立登記をおこなう

ひとつひとつの作業を見ていきましょう。


1.どんな事業をおこなっていくのか計画を立てる


いざ起業しようとしても、わりと漠然としたイメージで動き出す人が多くいらっしゃいます。もちろん、事業を進めながら必要に応じて動いていけばいいのだ、という考えもあるでしょう。それも大切です。
しかし、どのような目的を達成したいのか、そのためには何時・何をすれば良いのか、ひとまず現時点で何をしていなければならないのか、ということを数値によって行動計画に落とし込む必要があります。

たとえば、融資を受けようとするときには事業計画書を書かなければならないとか、認可制の法人が定款変更をする際に事業計画書を提出しなければならないなど、提出を強制されるケースもありますが、本来は強制されなくとも(文章化する必要はないですが)事業計画自体は十分練っておく必要があります。

事業計画をしっかり練ることで、企業の軸が定まり、事業開始後の行動指針が明確になります。地図を見て目標地点に行くか、地図を持たずに行くかの差が大きいのは歴然でしょう。また、それはコストダウンにも直結するので、是非とも実践してください(できれば誰かと一緒に練ることをお勧めします)。



2.定款を作成する


事業計画を練ったら、その目的を達成するために会社の憲法と言われる定款を作成します。
さて、何のために定款を作成するのでしょうか。

定款は、事業目的を達成するうえで、株式会社制度を具体的にどのように利用するのかを宣言した書類です。つまり、発起人が会社を設立するにあたって掲げた目標を、どのような名前の会社で、どこに事務所を置いて、何の事業を行い、そのために会社の財産の基礎をどうするのか、ということを書類に書いて宣言するのです。

先ほど事業計画を文章化する必要はないと書きましたが、それは定款において体現されている必要があります。だから安易に他人に任せて作成するものではないし、定型的な条項をどこかからテキトーに調達するような代物ではないわけです。

私は定款を作成する際には、通常は社長となる発起人の方としっかりと打ち合わせを行うことにしています。それは、専門家として事業の立ち上げに関わる以上、ただ単に書面を作成すれば良いというような話では済まされないからです。また、真剣に事業の立ち上げを検討されているからこそ専門家にも頼るのであり、法律の枠組みをどのように活用していくのか、ということを説明することによりコンプライアンスの基礎固めも可能となると思います。


さて、少々脱線してしまいましたが、定款を作成するに当たりまずもって書かなければならない事項があります(絶対的記載事項といいます。)。

  • 目的
  • 商号
  • 本店の所在地
  • 設立に際して出資される財産の価額またはその最低額
  • 発起人の氏名または名称および住所
  • 発行可能株式総数

これらについては書かれていなければ、設立は無効になってしまいます。というか、そもそも定款が認証されません。

この中で注目して頂きたいのが「目的」です。法人というのは、権利義務の主体となれる存在ですが、人間のような自然人とは異なり、権利義務の主体となれる範囲が決まっています。それがここで定める「目的」です。つまり、この「目的」で定められた範囲でしか法人は権利義務の主体になれず、もし仮に目的の範囲外の事業を行ってしまえば、それはもはや法人の行為とはいえず、無効となってしまうのです。

それだけ重要な「目的」なのですが、ここには「中古自動車の販売」とか、「飲食店舗の運営」「建築工事、店舗工事の企画、設計、施工、コンサルティング」といった、具体的な事業内容を書きます。「目的」という言葉からするとしっくりこないかもしれませんが、株式会社がどのような事業を行うことを目的として設立されたのか、について明らかにすると考えておいてください。

この目的は事業計画に基づいて定めないと、後々許認可を取得する際に定款の変更が必要になったりしますので、十分注意してください。


また、「商号」(会社の名前)が決まったら、法人印(代表印)を作りましょう!
個人の実印も必要ですが、法人印は登記申請の際に印鑑登録を法務局で行います。そのため、商号が決まったら早速注文してください。


上記以外にも、定款に定めておかないと無効になってしまうものがあります。それが以下の事項です(相対的記載事項。変態設立事項とも言います。)。
  • 現物出資を行う者の氏名、対象財産・金額、割り当てる株式数
  • 財産引受け
  • 報酬等
  • 設立費用
これらは、設立する株式会社の財産の基礎を確実に確保するために設けられた規制です。特に利用されることの多い「現物出資」は、金銭の代わりに自動車や不動産などによって出資を行うと言うものです。現物の評価が恣意的になりがちで、設立後の会社債権者や、他の出資者に損害を与えてしまう可能性があることから、予め定款で定めておく必要があります。

法務省のホームページに参考となる定款例があります。

法務省:商業・法人登記申請
 ほとんどの会社はここの定款通りに書いてあるように思います。しかし、ちゃんと事業計画を立て、どのようなプランで会社を設立させていこうと考えるのかによって定款にどのような条項を載せるべきかは変わってきます。これは専門家に相談しないとほとんど分からないと思いますので、専門家が定款を作成する意味はこの点にあると言えるでしょう。

なお、定款変更手続きというのも設立後に行うことができます。株主が一人の会社であれば手続は難しくありませんが、費用はかかりますので会社を大きくしていくためには必ず専門家に相談される機会は何度か訪れるでしょう。


3.定款の認証をする


完成した定款は、そのまま放置しておいてもいけません。定款内容を確定して、公にも公表できるようにするために公証人役場という役所で認証の手続を行う必要があります。何だか難しく聞こえるかもしれませんが、要は、公証人という人から定款にハンコをもらうのです。

この認証作業を終えることは、会社設立のための登記申請に必要なことです。
ですので、まずはここまでしっかりと終えましょう。会社が成立するまでもう少しです。

●全国公証役場所在地一覧
設立する会社の本店の所在地を管轄する法務局所属の公証役場に行きましょう。


4.会社の財産を形成する


株式会社の設立を認めてよいかどうかを審査するのは法務局です。
当該法務局において、設立しようとしている株式会社の財産的基礎が、存在するかどうかを証明する手段が、本項目になります。一人で会社を設立しようとしている場合には、①「預金口座へ資本金を預入れる」、そして、②「預金通帳のコピーを取る」という流れになります。


なお、複数人で設立する場合には、現金の「振り込み」によります。
公証人による定款の認証日以後、発起人の預金口座に振り込みます。もし間違って、定款の認証日前に、資本金の払い込みをしてしまった場合は、いったん、引き落として、再度、定款の認証日以後、振り込みます。

入金の仕方は、面倒でも通帳に発起人(振り込み人)の記載が残るようにします。つまり、単なる入金(預入)ではなく、発起人の名前が記載されるように、「振り込み」をしてください。自分の口座に他人が現金を振り込むようなものです(一人で設立するだけなら「預入」で構いません。)。


■通帳のコピーについて
以下の手順でコピーをしてください。

  1. 通帳の表紙をコピー
  2. 通帳の表紙の裏(金融機関名、口座番号などが記載されている箇所)をコピー
  3. 出資金額が払い込まれた事実が確認できるページ

上記3か所をコピーし財産の基礎の事実を示し、設立される会社が当該事実を法務局に証明するということになるわけですね。


5.設立登記をおこなう


株式会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立します(会社法49条)。定款を作成したり、払込みを行ってコピーをするのは、全てこの設立登記をするためのアクションです。株式会社は法律に則って設立手続がなされれば、原則として設立は認められます(準則主義)。


登記申請に必要な書類
(クリックして拡大できます)
設立登記を行う際には、自分で手続をするか、司法書士に依頼するのが一般的です。一人で会社を設立する際には自分で行っても良いんじゃないかなぁとは思いますが、誰かに依頼するなら司法書士さんが良いでしょう(行政書士は登記申請を行うことは認められていません。)。

通常、「会社設立」を謳っている行政書士は司法書士さんとも提携しておりますので、何度も専門家を訪ねる必要はありません。

また、少しでも費用を低くしたい、ということでしたら自分で手続することももちろん可能です。


では、登記手続を見てみましょう。
必要書面は上の表のとおりです。
そして、手続は法務局というところで行います。


法務局は、登記全般を取り扱う役場です。そして、登記手続はどこで行っていいというものではなく、法務局でも不動産登記は扱っているけど商業登記は取り扱っていないという場所も沢山あります。また、登記対象によって管轄が違ってきますので、自分が行おうとしている登記はどこで受け付けてくれるのかを事前に調べておきましょう。


法務局のホームページで調べることができます。
法務局 管轄一覧


このように、適切な法務局を見つけ、必要書類を準備したら、後は会社設立希望日(平日)に法務局に行きましょう!


さらに細かな手続はこちら(PDF資料)を参照して頂き、最終的には資料を法務局に持参してどんどん職員の方々に聞いてもらえれば大丈夫でしょう。




その他、費用とか

株式会社を設立するのに最低限必要な費用は以下のとおりです。

①認証手数料5万円 
②謄本手数料若干(例えば,用紙が5枚の定款であれば1250円) 
③印紙代4万円 
④設立登記の登録免許税が,出資金の額の1000分の7に相当する額(ただし,それが15万円に満たないときは15万円) 
⑤その他,代表者印作成代,印鑑登録証明書代等

などが必要なので,最低でも約25万円位の費用が必要です。さらに専門家に依頼すれば報酬額がさらにかかります。


ちなみに専門家の報酬額はマチマチです。
定款の内容などどうでもよくて「とにかく株式会社という箱が欲しい」という方はインターネットで激安の事務所を見つけることもできます。他方で、多少お金をかけてでも十分会社の仕組みを理解して、会社の今後の相談相手も作っていきたいと考える方もいると思います。この点は、皆それぞれのスタンスがあるでしょうし、正しいスタンスなんてありません。是非皆さん自身にとって最適な専門家を見つけてください。

自分に合う専門家がどんなものか分からない人も多いかもしれません。
そんなときは、是非当事務所にご相談ください(笑)

冗談は抜きとして、皆さんとお話しをさせていただいたうえで、提案をさせていただきます!




さて、いかがでしたでしょうか?

若干駆け足で説明してしまいましたが、要は①どのような目的をどのように達成したいのかを決める、②計画を実行できる会社組織を検討する、③財産的な基礎を確立する、④登記官に法律に則って手続をしたことを「証明」する、というだけの話です。

「だけ」とは言っても、煩わしいと感じるのが普通ですよね。でも、この煩わしさは会社として事業を進めていく上ではほんの入り口に過ぎません。
言ってしまえば会社は作るのは簡単ですが、継続していくことが大変難しいのです。
日々の会計処理や、税務申告、契約の管理、債権の管理、など法律的にも会計的にもこなしていかなければならない事項は多数あります。そして、それらの事務を回しながら、事業の計画の見直しや新規事業の計画など、経営者はすごーく忙しいのです。


だからこそ、私は常々アクセスしやすい専門家が必要だと考えています。その一つが、過去に書きました「顧問契約」という利用方法です。月々2万~3万円程度で顧問契約を結んでしまえば、後はその専門家の職種に応じた相談をどんどんふっていけばいいのです。自分の頭を増やすとか、面倒くさい法律関係の事務について自分の代わりに動いてくれる存在を作るイメージで良いと思います。

是非とも「上手に」活用してみてくださいね!


ちょっと会社設立から外れてしまいましたが、読んで頂けた方の参考に少しでもなれたら嬉しいです。情報が足りていない、とか、「意味がワカラナイ」という部分がありましたら教えてください!

 
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