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2011年12月3日

災害廃棄物の広域処理と受け入れ先の住民の理解

引用元:東日本大震災 写真保存プロジェクト

東日本大震災における大規模な津波により、膨大な量の災害廃棄物が発生しました。岩手県、宮城県、福島県で発生した災害廃棄物は、約 2,270 万トンと推計されています。これは、3県において1年間で排出される一般廃棄物の約 11 年分の廃棄物量に相当するという。より一層の復興活動を進めるためには、災害廃棄物の処理は大前提であることから、適正かつ効率的に処理を進めなければなりません。

本来、災害廃棄物の処理は各市区町村の責務ですが、被災地では処理能力が不足していることから、被災地以外の施設を活用した広域処理が必要になります。
このたび佐賀県武雄市が広域処理に賛同し、災害廃棄物の受け入れを表明致しました。しかしながら、地元住民からの強い(中には脅迫のような反対もあったとのこと)反対により、受け入れを撤回することとなりました。

武雄市長のコメントを市長のブログで読むことができます。

広域処理の必要性については誰もが否定できないものだとは思いますが、いざ受け入れを行うかどうかについては、今回の武雄市住民のような反対は決して特殊なものでもないと思います。「自分たちの健康に悪影響があるんじゃないか」「子どもたちを安心して育てられないのではないか」「風評被害により農産物等が売れなくなってしまうんじゃないか」など、少なからず誰もが不安に思うことでしょう。したがって、受け入れに反対する人々を責めることもまた違うと思います。

広域処理を行うにあたって、環境省では安全性のチェックを行っておりました。

災害廃棄物の広域処理の推進について(改定)(ガイドライン)
この資料では、廃棄物の運搬から処分(埋め立て、焼却)について、懸念されている危険性について様々な資料を用いて安全性を検証した結果を、ガイドラインとしてまとめています。専門家の意見としては「安全性を肯定できる」ということのようです。

ただ、このガイドラインが示す安全性は、様々な前提条件のうえに成り立っています。搬出する側の分別や、受け入れ側の処理方法など、適切な方法が全て行われて初めて成り立つものなのです。そのため、ガイドラインについては断定的な判断は極力避けられています。

結局のところ、本当に安全かどうかなどということは誰も保証はできないわけですよね。科学でさえそうなのですから、政策に関しても当然。結果論でしか、政策判断の良し悪しを検証することができないっていう・・・そういう性質なのです。だから、「絶対」とか「100%」というのは、言おうが言うまいが「不確実」であるという点を、出発点にして考えなければなりません。

現時点で言えることは、災害廃棄物を適切に処理し、復興を一刻も早く完了させなければならない、ということです。そしてそのために広域処理を避けることはできない。その広域処理に関し、たくさんの専門家が安全性をできる限り少なく見積もったうえで、「安全」という結論を示した。

廃棄物はただそれだけでも皆嫌がるものですが、災害廃棄物にはさらに放射線物質が絡んでいます。何かあったら取り返しがつかない、そういう怖さがあるんですよね。とても難しい問題です。
ついつい「正しい」「かわいそう」「こわい」というような感情的な議論が先行してしまいがちですが、広域処理に関しては、「受け入れるのであればどのように処理を進めるのか」「どのようなリスクを背負うことになるのか」「そのリスクにどのように対処していくのか」ということをリーダーが住民に示し、各地域住民の理解に基づいて決定すべき事柄です。朝日新聞の記事によれば、住民の理解を得るために必要な手順を十分にとっていなかった面もあるように思います(実際のところは分からないけど)。スピーディーに解決すべき問題ですが、雑にやって良いという話ではない。


上に紹介した武雄市長のブログを読んで、災害廃棄物の処理に関して確認してみようと思った次第でしたが、私自身が全く復興の力になれていないことを痛感し、もどかしくなってしまいました。私の仕事は許認可の取得の手伝いや、法務の手伝いであり、それ自体が目的ではなく、その先の大きな目的を実現するための手段です。自分の仕事の一つ一つが、巡り巡って東北地方の復興にもつながるかもしれない!という気持ちで、改めて頑張りたいと思います。


細野環境大臣のメッセージです。(政府インターネットテレビ)
(http://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg5505.html)


(それでは。)
 
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